― タモキシフェンを分解する力を遺伝子で調べます ― CYP2D6遺伝子チェックテスト
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テストの目的
 ー CYP2D6遺伝子とタモキシフェンに関する研究とその評価 ー

タモキシフェンの効き方には、CYP2D6以外の要因も影響しています。

タモキシフェンの代謝経路

タモキシフェンが肝臓で有効成分であるエンドキシフェンに変換される際には、CYP2D6だけでなく、ほかのCYPやSULT1A1、UTGsといった代謝酵素も働いています。またSULT1A1、UTGsという代謝酵素も、遺伝子タイプによって代謝する力にばらつきがある可能性が指摘されています。

併用薬も大きく影響します。CYP2D6の働きを阻害する抗うつ薬パロキセチンという薬をタモキシフェンと併用した場合、併用していない患者と比較して、エンドキシフェン血中濃度が50%未満に低下することが報告されています。(1)

また、遺伝子タイプには人種差も存在します。たとえば、欧米では、代謝機能が低下するCYP2D6*10という遺伝子タイプを持つ人が約3%なのに対し、日本では約40%存在すると報告されています。このように人種間で遺伝子タイプの頻度が異なるため、タモキシフェンとCYP2D6との関連に関する報告に地域間で偏りが出ています。

以上のような理由に加え、タモキシフェンとCYP2D6に関する報告は、過去に別の目的のもと、さまざまな条件で行われた研究(後ろ向き研究)なため、相反する結果が報告されており、評価はまだ定まっていません。2010年にアメリカのサンアントニオで開催された国際的な乳がん学会(SABCS: San Antonio Breast Cancer Symposium)では、CYP2D6の遺伝子タイプは治療・再発と関連しないという報告がされています(ATAC trial とBIG 1-98 trial)。また日本乳癌学会による乳癌診療ガイドラインの推奨グレードもC2(科学的根拠は十分とはいえず、実践することは基本的に勧められない)となっています。

しかしその後、SABCSでの報告は、対象者の選択に偏りがあるなど試験デザインに問題があることや、検体とされたDNAの質が悪かったことなどが指摘されています(2)(3)。乳癌診療ガイドラインの推奨グレードC2という評価は、科学的根拠を示すために充分な研究が不足していることが理由であり、CYP2D6とタモキシフェンの関連を否定するものではありません。現在、大学機関等でCYP2D6とタモキシフェンに関する日本人を対象とした大規模な前向き研究が行われており、その研究結果が待たれます。また、当社も日本人のデータを収集することで、研究に貢献してまいります。

医療が発達したことで、乳がんの治療法には、現在多くの選択肢が提示されています。しかし、最終的にどの治療法を選ぶか決断されるのは患者さんご自身です。ご自身で納得のいく治療法を選択する際の1つの目安として、ぜひ本テストをご活用ください。

「CYP2D6とタモキシフェンに関する最新の研究動向」については、トピックスに掲載しております。

(1) Sideras k et al.Coprescription of tamoxifen and medications that inhibitCYP2D6.J Clin Oncol 28:2768-76,2010
(2)William J. Irvin Jr et al. Genotype-Guided Tamoxifen Dosing Increases Active Metabolite Exposure in Women With Reduced CYP2D6 Metabolism: A Multicenter Study J Clin Oncol. 2011 Aug 20;29(24):3232-9.
(3)Brauch H, et al Tamoxifen Use in Postmenopausal Breast Cancer: CYP2D6 Matters.J Clin Oncol. 2012 Oct in press.
*後ろ向き研究:現在から過去にさかのぼってデータを収集する研究法。
*前向き研究:現在から将来へ向けて、データなどの情報を収集する研究法であり、仮説を事前に明らかにして、観察項目や観察時期を決めて行うもの