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治験事務局

治験とは?

治験とは、現在の医療技術では治療が困難な病気に対し、「新しい薬の候補」を、実際に病気(自然発症)の犬・猫に使用して、その効果(有効性)と副作用(安全性)を科学的な方法で正確に調べる臨床試験の事を言います。この治験の結果をふまえて、国(農林水産省)の審査をクリアしたものが、「動物用医薬品」として医療現場で使用可能となります。

治験に参加することは、参加した病気の動物たちの治療のみならず、新しい薬や治療方法を誕生させることによって、次の世代の同じ病気に苦しむ動物たちが、新たな治療を受けられることにつながると期待されています。

現在、下記の2つの治験が全国の動物病院の協力のもと進んでいます。

犬の脊髄損傷 既存療法では治療が困難、もしくは改善が見られない犬の脊髄損傷を対象に、他家(Allogeneic)の皮下脂肪から分離・培養された脂肪由来間葉系幹細胞を移植し、その安全性および有効性を確認する。
犬の重症肝疾患 重症肝疾患の犬を対象に、他家の脂肪組織から分離・培養された脂肪由来間葉系幹細胞を静脈内に投与する群および無投与群において、その有効性および安全性を確認する。

脂肪由来幹細胞とは?

「細胞を生む」細胞のことを幹細胞といいます。全ての生き物のからだは細胞からできています。人間の体内には約60兆個もの細胞が存在しています。細胞はそれぞれ、その場所にあわせて決まった役割を持っています。幹細胞の特徴は他の細胞の元となる細胞をうみ出す事ができるという事です。幹細胞は、自分以外の細胞を生み出す際に、2つに分裂します。この分裂した細胞のうち一つは幹細胞として維持され、もう一つの細胞は他の細胞へと変化する細胞になります。幹細胞は傷ついたり、古くなってしまった細胞を入れ替えるために、この様に新しい細胞を作っているのです。幹細胞は様々な組織の中に存在します。そのなかで脂肪の中に含まれている幹細胞を「脂肪由来幹細胞」といいます。

幹細胞の種類

幹細胞と同じように他の細胞に分化する能力を持っている細胞は他にもあります。例えば胚から作られるES細胞(胚性幹細胞)、からだの中に存在する体性幹細胞、そしてノーベル医学生理学賞を受賞された山中教授によって作られたiPS細胞(人工多能性能幹細胞)なども幹細胞です。しかしながら、ES細胞は胚から取得しなければならないので、倫理的上の問題があります。また、iPS細胞は人工的に遺伝子を操作しますので安全性の課題がまだ、解決されていません。そのような中で体性幹細胞は体外で増やすことが困難ですが、それ以外の多能性や倫理上の問題、移植の適合性などの問題はなく、最も安全性が高い細胞と言われております。

体性幹細胞の種類

体性幹細胞には様々な種類があります。血球系などの細胞に分化する造血幹細胞は数十年前から骨髄移植としての歴史があります。この中で今回の治験で用いられている細胞が、「間葉系幹細胞」です。 間葉系とは、骨髄、皮膚、脂肪、臍帯といった組織をいい、その中に存在する幹細胞を間葉系幹細胞といいます。

体性幹細胞の種類

体性幹細胞の種類

幹細胞による治療

幹細胞は、様々な臓器に分化する能力を有していることから、幹細胞から臓器を作り出して、その臓器を移植する治療方法があります。

しかし、我々が行っている治療方法は、幹細胞そのものを投与します。体内に投与された幹細胞は、全身を巡り、損傷している部分を自動的に検知してその部位に集まり、損傷した組織を修復、再生すると言われています。

このような治療を全国の動物病院で実施することで、その有効性と安全性を評価することがこの治験の目的となります。

幹細胞はどんな病気に有効か?

幹細胞はその安全性の高さから、世界中でヒトの臨床治験が行われています。すでに「薬」として承認されているものもあります。

すでに臨床応用が進んでいる疾患領域
神経疾患肝臓疾患皮膚疾患
脊髄損傷腎臓疾患皮膚欠損
変性性脊髄症(DM)骨疾患手術後の皮膚形成
関節炎免疫不全毛並み・毛艶の改善
アンチエイジング

今後、臨床応用が進む疾患領域
突発性難聴心臓疾患糖尿病
眼下疾患伝染性腹膜炎(FIP)歯科疾患
認知症その他難治性疾患

どこで幹細胞治療ができるのか?

幹細胞治療(治験に参加する)は、指定の治験実施施設(動物病院)でしかできません。これらの病院は弊社のホームページ上で確認ができます。もし、お近くの病院がない場合には、かかりつけの病院を弊社にご紹介して頂ければ、弊社のスタッフが出向いて幹細胞治療(治験)のご説明をその先生にお話させて頂きます。そこで、ご理解が得られれば、その病院と治験契約を結び幹細胞治療を受けることが可能となります。

幹細胞治療の可能性

幹細胞治療はまだ始まったばかりです。これまで治療法がなかった病気に対して、新たな可能性を示してくれると期待しておりますが、まだ治療法として確立されたものではありません。従って、期待通りの有効な結果が出ないことも考えられます。このようなリスクを十分にご理解した上(同意・説明文書での承認の上)で、この治験にご参加頂きますようお願いします。この治験は薬事法の規定に基づき、有償にて実施されています。

動物薬の開発プロセス

基礎研究 大学等の研究機関において、対象となる治験薬の基礎データの収集を実施しました。
治験 動物薬の治験では、ヒトの治験のように第1相、第2相、第3相とフェーズを分けて実施することはありませんが、治験のルール「動物医薬品の臨床試験の実施に関する基準」(GCP)に基づいて治験運営を行うことには変わりありません。治験では、より多くの被験動物を対象に薬の効果と安全性を確認します。また、治験で得られた様々なデータは、臨床的判断と統計解析を行うことでその有効性を検証します。
農林水産省への申請・認可 治験データを農林水産省へ提出し、審査を経て動物薬としての承認を得ます。

LinkIcon 動物医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令