2006年8月15日、米国ボストン地域の11の医療研究機関から構成されている自閉症コンソーシアムは、米国の自閉症患者3700例の遺伝子解析に、Affymetrix社(米国カリフォルニア州)のGeneChip(R)Human Mapping 500Kアレイを使用すると発表した@。Affymetrix社は遺伝子解析を行うマイクロアレイ業界の最大手であり、同社の製品は創薬に関わる企業や研究施設など世界中で使用されている。同製品は50万個以上の一塩基多型(SNP)を一度に解析でき、遺伝子情報全体を通して疾患や薬剤に関連する遺伝子を探索できる。同コンソーシアムは、早ければ半年で自閉症関連遺伝子の知見が得られることを期待しており、自閉症の診断法や治療法開発に役立てたいとのこと。
自閉症の有病率は一卵性で60%〜90%、二卵性で10%以下Aといわれ、遺伝的要素が強いことが認められてきている。最近では自閉症に関連していると思われる染色体や遺伝子も報告されてはいるが、環境因子なども含まれる複雑疾患であるため発症原因はいまだ不明だ。今回の“Autism Gene Discovery Project”は、明確な診断指標(バイオマーカー)や治療法が確立されていない自閉症治療の開発を躍進させる重要なプロジェクトになるだろう。
かつて自閉症は「育児問題」や「心の病」と誤解されていたが、近年の技術発達によって先天的な中枢神経系の発達障害であることがわかり、広汎性発達障害の1つとして位置づけられている。DSM-IVBによると、自閉症は対人関係やコミュニケーションの構築困難、限定した興味や反復行動といった3つの臨床的要素が3歳頃までに見受けられ、現状では臨床的診断に頼らざるをえない。
自閉症の有病率は1万人に2〜5人、男子は女子より4倍多いといわれている。しかし、最近の報告によると、英国では1万例中116例(1.16%)が自閉症含む広汎性発達障害を有しC、米国では67例(0.67%)D、日本でも1988年と1994年における自閉症の累計発症率が1万例中16.2例(0.16%)から21.1例(0.21%)Eと患者数が増加傾向との見方がある。だが、自閉症の診断定義の拡大や診断技術感度の向上、環境因子の暴露などさまざまな要因も考えられるため、患者数の増加原因にはさらなる調査が必要だ。本プロジェクトによって、自閉症患者数の増加傾向の真偽も検討できるかもしれない。
遺伝子解析技術の発達に伴って、診断が困難な中枢神経系の領域でも少しずつ病態解明が進んでいるだけでなく、今回のように解析時間の短縮化も可能になってきた。こういった技術向上が、長期化しがちな新薬の開発期間の短縮化や開発の効率化につながるのだ。
【出典および参考資料】
@・First Comprehensive Study to Discovery the Genetic Causes of Autism
http://www.bio.com/newsfeatures/newsfeatures_research.jhtml
;jsessionid=HDCW1OYIXVEFDR3FQLMCFEWHUWBNSIV0?cid=21100020
・CHGR scientists participate in new autism genetics initiative.
http://www.massgeneral.org/chgr/news.htm
A・Autism as a strongly genetic disorder: evidence from a British twin study.
Psychol Med. 1995;25(1):63-77
・Genetics of autism: from genome scans to candidate genes
Med Sci (Paris). 2003 Nov;19(11):1081-90
B・米国精神医学会で定義している精神疾患の分類と診断マニュアル
および基準 (The Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
・社団法人 日本自閉症協会(http://www.autism.or.jp/)
CPrevalence of disorders of the autism spectrum in a population cohort of
children in South Thames: the Special Needs and Autism
Project (SNAP).Lancet. 2006 Jul 15;368(9531):210-5
D・Trends in autism. Int J Adolesc Med Health. 2004 Jan-Mar;16(1):75-8.
・Prevalence of Autism in a US Metropolitan Area JAMA.2003;289:49-55.
ECumulative incidence and prevalence of childhood autism in children in
Japan. Br J Psychiatry. 1996 Aug;169(2):228-35 |