「ドラッグ・ラグの解消に日本は主体的に国際共同治験の参加を
                          ―人種差から生じる薬効の違いをPGxで検討する可能性」

 国内の治験空洞化は、世界の医薬品産業界における日本の立場と競争力の低下を招くだけでなく、先進国で標準治療薬として認められている医薬品が日本では未承認がゆえに、日本国民が必要な薬物治療を受けられないドラッグ・ラグの深刻化に拍車をかけている。平成18年6月6日時点で厚生労働省が報告した、国内で治験準備もしくは進行中の未承認薬剤は21剤、そのうち抗がん剤が1/3を占めていた*。
 同省は2002年に打ち出した治験活性化計画を来年新たに策定する予定だが、医薬品医療機器総合機構理事長の宮島彰氏は、ドラッグ・ラグを解消するために日本の積極的な国際共同治験の参加を促し、人種差を考慮したアジアデータを評価・活用するにあたり、Pharmacogenomics(PGx)など先端技術を取り入れていきたい考えを日刊薬業に示している**。
 国際共同治験が進行している背景には、製薬企業が投入した莫大な新薬開発費を回収するために世界同時発売できることが重要であること、また、肺癌治療薬ゲフィチニブ(製品名イレッサ)が、欧米人よりアジア人において高い有効性が一部認められたことから、人種差による薬物治療の可能性が開けてきたことがある。人種の異なる国々が1つの臨床試験に取り組むことで、多くの被験者数を集めてより確実な有効性評価が可能だ。さらに、PGxを用いることで薬剤の有効性だけでなく、人種差から生じる有効性と副作用発現の違いも評価でき、アジア人データの中でも日本人、韓国人、中国人における有効性の類似点や相違点を見出し、将来的には人種による投薬の調整も行うことが可能となるだろう。
 また、国際共同治験に参加する他の理由として、国内の治験空洞化によって日本人データが輩出されなくなると、被験者数の多い中国といった他のアジア圏で収集されたデータをもとに日本人への投薬が行われる懸念がある。そして、アジア圏や世界の臨床開発における日本人データおよびわが国の存在価値に対する危機感の高まりも垣間見られる。
 国内の治験空洞化の背景には、高い治験コストやスピードの遅さ、そして治験参加医師に対する評価制度が不十分といった課題が主に挙げられる。国際共同治験に参加するならばこれらも同時に取り組む必要があるだろう。また、薬剤によって国際共同治験が妥当かどうか見極めも重要だ。
 PGxは個人に適した医療に活用されるだけでなく、人種という枠から有効的な治療法を見出すツールとしても期待されていることがうかがえる。

■出典■
@*厚生労働省:未承認薬使用問題検討会議での検討結果を受けて国内で治験準備中または実施中の医薬品に関する情報 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/07/s0715-2.html

A**平成18年6月15日(木)日刊薬業第12047号