経営理念

「最適医療のプラットフォーム」

当社グループは、「個人に最適な医療」の実現のため様々なアプローチで挑戦し、
社会インフラの一部として機能する「最適医療のプラットフォーム」を目指します。

 

中長期経営戦略

当社グループは、2013年3月より、新たな経営陣・体制で事業革新に乗り出しました。それに伴い、従来の事業戦略を大幅に見直し、残すものと新たに追加するものを吟味した上で、将来にわたり事業の成長を可能とするための事業戦略を構築しました。

事業成長の3つの柱は下記の通りです。

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1.遺伝子事業

遺伝子事業は当社グループが創業以来手がけてきた事業であり、これまでに多くの技術を蓄積してまいりました。
遺伝子事業は、下記3つのサービスを提供しています。

(1)個人を対象とした遺伝子検査サービス
(2)研究機関・企業を対象とした遺伝子受託解析サービス
(3)研究機関・企業を対象とした遺伝子保存サービス

<乳がん患者をターゲットとした遺伝子検査サービス>

遺伝子を知ることで、将来病気になるリスクや、飲んでいる薬に対する体質の応答性を知ることが可能とです。これまで当社グループは、遺伝子検査サービスを「病院」や「調剤薬局」を通じて販売してきました。しかし、実際にサービスを開始してみると患者さんから直接当社への問い合わせが多くあり、特に乳がんの患者さんからの問い合わせが多数ありました。

乳がんの患者さんの再発予防薬として「タモシキフェン」という薬があります。再発予防の標準的なホルモン療法として、5年間〜10年間服用されます。
この薬は、「CYP2D6」という代謝酵素(=新陳代謝を助ける働き)により分解されることでその効果を発揮するのですが、この酵素の働きには著しい個体差があります。ある患者さんには効が、他の患者さんに効かないというケースがあるのです。これは各個人の体質によって決まるのですが、その体質は遺伝子を解析することで、事前に知ることが可能となります。
つまり、遺伝子検査を行うことにより、この薬の「有効性」や「安全性」を事前に知ることができます。患者さんにとっては、効かない薬を長期間服用し再発するよりも、予め効果予測を行った上で、自らの体質にあった薬の選択をすることが可能となります。

代謝酵素には様々な種類が存在しており、代謝酵素と様々な薬の関係性がいろいろな研究機関で解明されつつあります。先の乳がん再発防止薬「タモキシフェン」以外にも、多くの薬が様々な代謝酵素の影響を受けていることが判明してきました。

しかし、このような体質と薬の応答性に関する遺伝子検査サービスは、まだまだ臨床現場では根付いておらず、当社が目指す最適医療には程遠いのが現状です。

当社グループでは、臨床現場のお医者さんが薬の処方をする時に、遺伝子情報を確認することが「あたりまえ」となるよう、遺伝子検査サービスを広めてまいります。

現在、乳がんの患者さんにフォーカスしてサービスを展開しておりますが、ほとんどの乳がん患者さんは「遺伝子と薬の関係」について、ご存知では有りません。当社グループでは、啓蒙活動の一環として「チアウーマン」という乳がん患者さんに特化したSNS(ソーシャルネットワークサービス)を2013年10月に開始いたしました。

このサイトでは、自分と同じ病状や経過の患者さんを探すことができ、そこでコミュニケーションが出来る仕組みとなっております。同じ境遇の人たちが集まり、励まし合って、人生を前向きに生きていくための支援サイトです。

ガンの告知を受けた人たちの誰もが「なぜ自分なのか?」という深いショックと孤独を味わいます。インターネット上には様々な乳がん関連のサイトが存在していますが、自分と同じステージや治療法を行っている経験を持つ患者さんを探すことはできません。
このサイトでは、乳がんに特化したマッチング機能を実現することで、孤独を和らげ、治療に関する最新の情報(遺伝子と薬の関係など)を提供することが第一の目的となります。


第二の目的としては、乳がん患者さん向けの支援データベースとしての役割です。国内には約24万人の乳がん患者さんが存在し、毎年約6万人以上が増加しています。チアウーマン・サイトの会員数の増加は、乳がん患者さん専門の支援データベースの成長を意味します。
このデータベースの拡充にともない、遺伝子検査サービス以外にも、最新の患者さん支援サービス展開を検討していきます。

たとえば、再生医療分野では、幹細胞を用いての乳房再建術式が、既存の治療法より有効性高く安全であるとの論文発表があります。今後、患者さん支援データベースの拡充に伴い、当社の再生医療事業など他分野とも連携を図り、最適な医療を患者さんにお届けする日が来ることを目指していきます。

<リスク遺伝子検査サービス>

2014年1月より従来からクリニックや調剤薬局を通じて販売してきたアルツハイマー病遺伝子検査サービスのネット直販を開始しました。

認知症患者数(アルツハイマー病を含む)は、現在462万人存在し、軽度認知症予備軍で400万人、65歳以上の人口の4人に1人が認知症であると言われています。
しかしながら治療薬はなく、いかに早期発見し症状の進行を遅らせるか?が現実的な対処療法となっています。

特に家族制アルツハイマー病は、ある特定の遺伝子を検査すると、その発症率がわかります。ご家族にアルツハイマー病を発症された方がいる場合は、遺伝子を検査することで、その潜在的な発症リスクを知ることができ、予防に役立てることが可能となります。
今後は、このような潜在ニーズを掘り起こすための新しいサービスを展開してまいります。

<検体バンキング・サービス>

DNAや細胞を保存する検体保管サービスは、2005年から神戸市にある先端医療振興財団との共同事業でスタートしました。
現在保管している検体の多くは、製薬企業が治験を行う際に収集した被験者のDNAです。
治験で扱う検体には、品質管理面で非常に高度かつ正確な取扱い技術が要求されます。そのため、当社グループでは、2008年2月にISO9001を取得しました。


このような品質管理体制のもとで検体保管サービスを実施している事業者は国内になく、その存在価値は高まりつつあります。このような状況下で、保管検体数は増加傾向にあります。

今後再生医療が普及することで、血清や細胞の保管ニーズも拡大されていきます。保管サービスは、保管単体でのサービス以上にその前後のサービも受注しやすい傾向があり、今後は下記のサービス拡充を目指していきます。

DNA情報には、個人情報分野で最も高いセキュリティーレベルが要求されます。検体の匿名化は必須事項であり、複数の病院や業者が関わる検体には、一次匿名化のみならず二次匿名化も要求されてきます。複雑なやり取りを正確かつスピーディーに実行するには、専用の管理システム(匿名化システムと検体管理システム)が必要となります。このシステムを提供しているのは、国内では当社のみとなっております。

次に、集められた検体(血液など)からDNAの抽出作業があります。DNAを抽出することで、安定的な保管が可能となりますが、このDNA抽出作業も当社のサービスの一つとなります。

最後に、保管されたDNAを解析するサービスがあります。
お客様から見れば、この一連の作業を一社・一カ所にてすべて実施・管理できることが望ましく、検体の移動を発生させずに、高品質での保管を実現していきます。

被験者からのDNAの採取を伴う試験は、製薬企業だけではなく、研究機関や東北復興事業のような行政事業でも行われています。
また、DNA解析コストが圧倒的に下がることで、いままで出来なかった解析も可能となります。これにより、新たな研究市場が立ち上がることが期待されています。

当社グループでは、このような成長市場で新たな付加価値を提供します。

2.再生医療事業

再生医療事業は主に3つのサービスで構成されます。

(1)ライセンシング
(2)幹細胞培養装置販売
(3)消耗品販売

<ライセンシング>

ライセンシングは、現時、動物医療分野で実施している「脊髄損傷」や「重症肝疾患」など幹細胞投与で治療効果が望める病気への治療法やデータが対象となります。幹細胞を治療用の“薬”として申請するためには、法改正を鑑みながら薬事申請が必要となります。現在iPS細胞が注目されていますが、基礎研究から実際の治療現場で使われるまでにはかなりの年数を要します。
当社グループでは、イヌを第1ターゲットとして、治験を進めていますが、イヌはヒトに比べて5倍〜7倍のスピードで成長する(Dog Year)と言われています。そのため、治験の結果をヒトよりも早く得ることが可能です。まずは、イヌで再生医療の安全性や有効性を早期に確立し、動物薬やヒトの医薬としてビジネス展開することで、開発コストの圧縮と・開発期間短縮を目指しています。

近年「ペットは家族の一員」との認識が高まり、ヒトとおなじ先端医療を受けさせたい飼い主ニーズが高まっています。また、イヌとヒトは、病態・病理組織など多くの点で類似性が高いことが論文発表されています。当社グループでは人工的な実験動物は用いず、ヒトと類似性がある自然発症の動物治療から得られたデータを用いることで、早期に治療法を確立し、再生医療分野での基礎研究から臨床応用までの時間を短縮していきます。

イヌの飼育頭数は1,153万頭であり、飼育世帯数は900万世帯を超えています(平成23年度)。

動物薬としての再生医療市場は、ヒトほど大きくはありませんが、法律や倫理面、さらにはコスト・時間など、再生医療技術を確立するための好条件を最大限活用していきます。
なお薬事承認を得ても、再生医療薬を世界各国で実際に製造・販売するためには当社グループ単独では不可能です。そこで、製薬企業などにライセンスを付与し、ロイヤリティなど安定的な収益を確保することが最もリスクが少ない方法であると考えています。

さらに、今後は自然発症動物の利点を活かして、全国にネットワーク化された治験施設(動物病院420施設)を活用して、受託試験を行う計画です。ヒトへの臨床応用を展開する前に、自然発症のイヌで仮説検証を行うことで、既存の創薬プロセスより低コスト・スピーディーな開発体制を確立します。特に、幹細胞の治験運営を実施している当社グループだからこそ可能な、再生医療の受託試験を展開していきます。

<幹細胞培養装置販売>

再生医療の産業化で最も重要なことは、均一かつ高い品質で幹細胞を増やし、提供することです。幹細胞の培養工程で、ヒトは最大の汚染源であり、ヒューマンエラーは確実に発生します。そのため、培養作業を行うためのロボット開発が各社で進められています。その多くは工学的なアプローチによるもので、ヒトが行う動作をそのままロボットに置き換える仕様となっています。これに対して、当社グループでは、幹細胞の細胞特性や増殖環境など培養プロセスをすべて見直し、「ヒトの作業のロボット化」ではなく「細胞増殖のロボット化」という新たなアプローチで開発に取り組んでおります。

<消耗品販売>

上記の幹細胞培養装置を用いるには、容器や培養液・試薬など専用の消耗品が必要となります。当社グループでは、消耗品分野でもビジネス展開を図っていきます。通常、プリンターやコーヒーメーカなどの機械分野では、機器販売後に消耗品市場が生まれています。再生医療が普及するにつれ、幹細胞培養装置は競合や類似品が増えることが予想されるため、消耗品分野においても特許戦略等を展開して中長期の成長を確保していきます。

3.ビッグデータ解析事業

これまで当社グループは、病気発病のハイリスク集団を事前に分析、抽出することで、病気の予防と重症化を未然に防ぎ、最終的には医療費の削減に繋げるべく、バイオマーカー探索事業として「遺伝子と薬の関係」や、「遺伝子と病気の関係」に関与する因子を探し出す技術を蓄積してきました。

この蓄積した技術を応用し、さらに強化するために、日々変化し増え続ける膨大な健康・医療・研究関連情報を統合した多角的な情報分析・解析が必要との考えから、世界最先端のテクノロジーとして多くの導入実績を持つ日本ヒューレット・パッカード株式会社のHP IDOLを活用した予防医療に特化したサービスを構築し販売していきます。

HP IDOLは、患者の診療履歴や健診結果データ等の構造化データと同様に、音声、動画、ソーシャルメディア、電子メール、ウェブコンテンツをはじめとした非構造化データに内包されるコンテクスト(個人的、環境的な背景や文脈)の理解と対応をリアルタイムで行うことを可能とします。これまでの導入事例としては、米国エンロン事件での不正証拠探索、セキュリティー・システムとして採用されたロンドン・オリンピックでのテロ活動の未然防止など、犯罪を未然に防ぐために活用されてきました。

海外の医療分野では、臨床データを自動的に収集するテクノロジーにより、患者が話す問診内容をインプットとして自動的に診断結果を提示するまでの仕組みが実現されています。

当社グループでは、この最先端技術を活用して日本独自の医療分野に特化したシステムを開発し、予防医療サービスを様々な形で展開していきます。

4.その他の事業

当社グループは、遺伝子事業とビッグデータ解析事業はメディビック、再生医療事業は、アニマルステムセルが主として活動してまいります。その他、創薬(ライセンシング事業)を行うメディビックファーマ、薬の治験支援事業(SMO事業)を行うサイトクオリティー、投資事業を行うAPECがございます。

メディビックファーマでは、膵臓がん用抗がん剤(グルフォスファミド)のライセンス営業活動を行っております。このグルフォスファミドは、昨年2013年10月に米国のエライソン社によってUSでフェーズ3スタディが開始されました。2015年の新薬承認を目指しております。
当社グループは、このグルフォスファミドのアジア地域における「ライセンス優先交渉権」と「日本での共同開発権」を保有しております。今後、当社が日本でグルフォスファミドの臨床試験を行う予定は現在のところありませんが、国内製薬企業及びアジアの製薬企業に対しては開発・販売権の営業活動は継続していきます。

また、サイトクオリティーが受注している治験のすべては「化合物」ですが、今後は再生医療市場をターゲットに「細胞療法」の治験受託サービスを展開していく予定です。アニマルステムセルではイヌを対象として幹細胞の治験運営を行っておりますが、この幹細胞の治験ノウハウをサイトクオリティーへトランスファーすることで、これまでのSMO業界にはない付加価値をヒトの治験市場で提供します。

APECに関しては、過去に投資した企業の管理は行いますが、新たに投資活動を行う予定はございません。